内モンゴル経済事情

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 内モンゴル自治区は『東部が森林、西部が鋼鉄、南部が農業、北部が牧畜業、至るところに鉱産』と言われてきた。事実上もそれほどだったが、今はそんなに楽観できないところである。以下には資源、インフラ状況、産業構造、金融投資、経済課題など面で簡単に紹介したい。

<資源>
 内モンゴルは鉱産埋蔵量の富んだ地域である。探査鉱産価値は13万億元になり、中国で三位である。世界上発見した140種類あまりの鉱産の中の120種類が内モンゴルで発見され、埋蔵量の探査したのは78種類に達している。特に、稀土鉱の探査埋蔵量が世界の70%以上も占めるという。このほか、石炭、石油、天然気、中国一の森林面積、549.14万公頃(中国の農作地の単位)の農作地と広い牧場草原などが数えられる。

<インフラ状況>
 内モンゴルのインフラ整備は比較的に整っている。自治区首都のフフホト市を中心とした鉄道、自動車道、航空の総合的運送網が整備され、特に地方鉄道の集通(集寧~通遼)線が開通し自治区の東部と西部を結んでいる。電力と用水の供給は十分であり、情報通信エリアは自治区の全域を覆っている。

<産業構造>
 今の産業構造は主にエネルギー・素材産業に偏在し、化学、電子、軽工業、畜産加工、乳業など産業もある程度に発展している。石炭による発電・鉱産物と初級品の輸出に重んじた産業構造は将来性のある視点に立った産業構造ではないことは明らかである。今後、充実したエネルギーと物産の優位性を生かせる化学、電子、畜産の精加工など高付加価値のある産業は高い期待を寄せられ、新規参入も殺到し、競争の激しさは増している。

<金融・投資>
 金融システムは主に四つの国有商業銀行、政策性銀行から形成され、補完的に地方金融機関(信用金庫相当)が加える。中国の経済体制改革と金融体制改革が内モンゴルに大きな影響を与えている。経済の市場化と国有銀行の商業化の進むに連れて、内モンゴルの偏在するエネルギー・素材など特殊な産業の市場化の遅れと市場化比率の低いという特徴により、大きなデメリットが発生している。つまり、内モンゴルに必要かつ貴重な資金が自治区内に保留されず自治区外に流出してしまっていることである。国が重要とされるエネルギー・素材産業の資金需要は国有銀行や財政から供給されるが、自治区経済の継続的発展を支える中小企業、地場産業は失血しつつである。近年に発足した地方金融機関(地域信用組合を統合、合併し成立)は株式会社制度を採用し、国外資本も25%まで直接な資本参加はできるようになった。この地域金融機関の地域経済と密着し、地場産業の育成に果たす役割に期待を寄せたい。投資において、自治区政府の外資誘致特恵政策と産業構造改革政策に注目したい。

<直前の経済問題>
 内モンゴルの伝統的産業は牧畜業であった。二十世紀のはじめ、特に後半に農業の開発が進み、今では農産物の産量は自給できただけではなく輸出できるほどに発展している。
 しかし、内モンゴルの自然環境の農作適応性は『農作が開墾の一年目は豊作、二年目は普通、三年目から年毎に減産』と言わられる。砂漠化の凄まじさもそれを側面から裏付け、『生態移民』の悲劇が上演することに至っている。
 では、内モンゴルの直面している課題は産業構造の是正と自然環境の保護を平行させることである。エネルギー・素材産業への過度依存を是正し、産業構造の合理性を図ると同時に、効率性を高めて、資源の優位性の発揮と自ら発展の原動力を得ることを目指す。
 砂漠化防止について、単なる『退農還林』(農地を森に返す)、『退牧還草』(牧畜を減らし、草を生やす)、『生態移民』(生態事情より牧民や農民を移転させる)策は一時的な手段に過ぎない。
 根本的な策は内モンゴルの少雨、乾燥、地表層が薄く破壊されたら再生しにくい自然環境の実情に合わせて、かつ現地人々の生活向上の配慮にポイントを置き、長期視点に立った経済行動を取り戻さなければならない。要すると、内モンゴル地域にふさわしい文化あるいは経済意識を再構築することである。

文責:エリヘムト
埼玉大学大学院経済学研究科院生